朝はコーヒーだけでも平気なのに、夕方になると急に甘いものが欲しくなる。
昼食は食べたはずなのに、帰宅前には菓子パンやスナックへ引っ張られる。そこで食べると夕食も遅れ、翌朝はまた食欲がない。
夜の食欲だけを見ると「我慢が足りない」に見えます。
でも、朝食欠食の若者を対象にした研究では、朝にたんぱく質を含む食事を入れることで、その日の空腹感や夕方以降の間食の出方が変わる結果が出ています。
ただし、「朝にたんぱく質を食べれば誰でも痩せる」という話ではありません。
研究で見えているのは、もっと手前にある食欲の波の作られ方です。
朝食を抜く・普通の朝食・高たんぱく朝食を比べた研究がある
2013年のHeather Leidyらの研究では、普段から朝食を抜くことが多い、過体重または肥満の若い女性20人を対象にしました。
比べたのは、
- 朝食を抜く
- 13gのたんぱく質を含む350kcalの朝食
- 35gのたんぱく質を含む350kcalの朝食
の3条件です。
それぞれ6日間続け、7日目に10時間の測定を行っています。
朝食を食べた日は、朝食抜きより一日の空腹感が小さくなりました。
高たんぱく朝食では、普通の朝食より満腹感が高く、朝食抜きと比べてグレリンが低く、PYYが高くなりました。
さらに、高たんぱく朝食では夕方以降の高脂肪スナック摂取が朝食抜きより少なくなっています。
一方で、一日の総エネルギー摂取量には有意差がありませんでした。
ここが大切です。
「高たんぱく朝食で一日全体の摂取カロリーが必ず減る」ではなく、空腹や食べたいものの出方が変わった研究です。
2010年の研究でも「朝食を食べる」だけと「たんぱく質を増やす」は少し違った
同じ研究グループによる2010年の試験では、朝食を抜く習慣のある若者を対象に、普通のたんぱく質量の朝食、高たんぱく朝食、朝食抜きを比較しています。
朝食を食べるだけでも満腹感は高まりました。
そのうえで、高たんぱく朝食では食欲感と昼食時のエネルギー摂取がさらに低くなっています。
ただし、この研究でも24時間の総摂取量には差がありませんでした。
つまり、朝食の役割は「その日のカロリーを機械的に減らす」というより、
いつ空腹が強くなるか どのタイミングで食べ物へ注意が向くか 次の食事でどれくらい急いで食べるか
といった流れに出る可能性があります。
「高たんぱくならグレリンが下がる」も、全員に同じではない
たんぱく質は満腹感を高めやすい栄養素として知られています。
ただ、ここも一枚岩ではありません。
2006年に健康な男性15人で、高たんぱく朝食と高炭水化物朝食を比較した試験では、高たんぱく朝食の方が食後のグレリンを強く抑えました。
一方、主観的な食欲と自由摂取時のエネルギー量には有意差がありませんでした。
身体のホルモン反応が変わっても、毎回そのまま「食べる量」へ直結するわけではない。
このズレが、食欲研究の面白いところです。
夕方の甘いもの欲は、夕方だけで始まっていないことがある
朝を抜いても、午前中は案外平気なことがあります。
仕事の緊張、カフェイン、移動などで空腹を感じにくい。
ところが午後になると、
集中が落ちる 疲れる 昼食から時間が空く 目の前の仕事を早く終わらせたい
という条件が重なります。
そこへ空腹が乗ると、ゆっくり食事を選ぶより、すぐ報酬が返ってくる食品へ寄りやすくなります。
チョコ、菓子パン、甘い飲み物、スナック。
食べること自体が悪いわけではありません。
問題は、その選択が毎日同じ時間帯に起こり、夜の食事や翌朝までつながっている場合です。
この一周を見ると、夜の過食へ「夜だけ我慢する」介入が効きにくい理由も見えてきます。
たんぱく質は「朝食を立派にする」ためではなく、後半を楽にする部品として使える
朝から35gのたんぱく質を取らなければ意味がない、という話ではありません。
35gは研究で使われた条件です。
日常では、今の朝食にたんぱく質源がほとんどないなら、まず一つ足してみる方が現実的です。
卵、納豆、ヨーグルト、豆腐、牛乳、チーズ、魚、肉、プロテイン飲料。
食欲が弱い朝なら、固形物を大量に増やす必要もありません。
重要なのは、その変更で夕方がどう変わったかです。
たんぱく質を増やしても夕方の食欲が変わらないなら、別の要因が大きい可能性があります。
睡眠不足、昼食が遅い、仕事のストレス、単純に総摂取量が足りない。
CCTでは「高たんぱく朝食が正解」ではなく、朝を変えたら一周後の夜が変わるのかを見ます。
東洋医学の「脾胃」は、朝食の量より一日の食欲のまとまりを見る
東洋医学では、食欲や消化を「脾胃」という機能概念でまとめて見ることがあります。
朝に食欲がなく、日中はなんとか過ごし、夕方から甘いものや重いものへ寄る。
こうした一日のばらつきを、単に「朝食を食べなかった」という一点ではなく、食べ物を受け取り運ぶ働きが安定していない状態として見ます。
これはグレリンやPYYを説明する理論ではありません。
ただ、現代研究がホルモンや摂取量を測る一方で、東洋医学が一日の中で食欲がどう立ち上がり、どう崩れるかをまとまりとして見てきたのは、比較すると面白い部分です。
どちらを使うにしても、朝食だけを採点するより、夕方と翌朝まで見た方が生活では役に立ちます。
朝食を変える目的は「健康的な人になる」ことではない
朝食は、健康習慣の優等生になるためのテストではありません。
朝に食べない方が調子がいい人もいます。
研究対象も若い朝食欠食者に偏っているため、「全員が朝に高たんぱく食を取るべき」と一般化はできません。
それでも、
朝はほぼ食べない 夕方に強い空腹が来る 帰宅前に毎日崩れる 夜遅く食べる 翌朝また食欲がない
という一周があるなら、朝は触ってみる価値のある場所です。
夜の自制心を増やすより、夜に自制心を必要としない流れを朝から作れるか。
高たんぱく朝食の研究は、その可能性を考える材料になります。