朝は食欲が弱いのに、夕方から夜になると急に食べたくなることがあります。昼までは持ったとしても、夕方以降に甘い物や脂っこい物へ引っ張られやすくなり、帰宅後に一気に崩れる。そういう日は、単に意志が弱いというより、朝からの食欲の流れがうまく作れていないのかもしれません。
朝食の話になると、食べるか食べないかだけで語られがちです。けれど実際には、朝に何を食べたかによって、その日の空腹の出方や間食の起きやすさまで変わることがあります。
"A breakfast rich in dietary protein provides additional benefits through reductions in appetite and energy intake."
(たんぱく質が豊富な朝食は、食欲とエネルギー摂取量を減らすという追加の利点をもたらします。)
Heather J. Leidy と Alex R. Racki による The addition of a protein-rich breakfast and its effects on acute appetite control and food intake in 'breakfast-skipping' adolescents(朝食欠食の若者に高たんぱく朝食を加えたときの急性の食欲コントロールと食事摂取への影響)は、朝食を抜きがちな若者に朝食を加えたとき、とくにたんぱく質を多めにした朝食が、その後の食欲や摂取量にどう影響するかを追った研究です。ここで見えてくるのは、朝食を食べるかどうかだけでなく、朝に何を食べるかが、その日の空腹感の出方に関わる可能性です。
この研究では、朝食を抜きがちな若年者を対象に、通常たんぱくの朝食、高たんぱくの朝食、朝食抜きの条件を比較し、食欲感やホルモン反応、昼食時の摂取量を調べています。 この研究が面白いのは、朝食の話を単なる健康習慣ではなく、空腹感や間食の出やすさという一日の流れとして示している点です。
朝を抜く日は夜ほど食欲が暴れやすくなることがある
日常では、朝を軽く済ませること自体は珍しくありません。食欲がない、時間がない、食べると重い。理由はいろいろあります。ただ、朝を抜いた日は、一日を通して安定しているというより、ある時点で急に崩れる感覚が出やすいことがあります。
この崩れ方の厄介なところは、朝の時点では問題が見えにくいことです。むしろ「食べなくても平気だった」と感じます。ところが夕方以降になると、理性的な空腹というより、早く強いものを入れたい感じが出てきます。朝食の影響は朝だけで終わらず、その後の空腹の波の形にまで関わっている可能性があります。
たんぱく質は満腹感の立ち上がりに関わりやすい
たんぱく質が注目されるのは、筋肉の材料だからだけではありません。食欲の研究では、たんぱく質を含む食事は、満腹感や食欲関連ホルモンの反応に影響しやすいことが知られています。今回の研究でも、朝食を食べること自体で満腹感は上がりましたが、高たんぱくの朝食では、さらに食欲や摂取量の低下が見られました。
ここで重要なのは、たんぱく質だけが魔法の成分という話ではないことです。朝食そのものにも意味があり、そのうえで、たんぱく質が多い朝食は空腹の戻り方を穏やかにしやすい可能性があります。
食欲の乱れは血糖だけでなく報酬系の揺れとしても現れやすい
食欲が乱れるとき、問題は胃の空っぽ感だけではありません。長く食べない時間が続くと、脳は早く強い報酬をくれる食べ物を求めやすくなります。甘い物、脂っこい物、食べやすい炭水化物に引っ張られやすいのは、そのためです。
朝にたんぱく質を含む食事が入ると、消化吸収の流れや満腹関連シグナルの立ち上がり方が変わり、空腹の質が少し変わりやすくなります。すると、後半の時間帯に「何でもいいから早く食べたい」という崩れ方をしにくくなる可能性があります。
朝食の弱さは夕方の過食として返ってきやすい
朝に何も入らないと、その場では楽に見えます。けれど、あとでまとめてその反動が来ることがあります。昼までは持ったとしても、午後後半になると判断力より報酬欲求が前に出やすくなり、間食やドカ食いにつながりやすくなります。
つまり、夜の崩れは夜だけの問題ではありません。朝の入力不足が、夕方以降の食欲の荒れ方をあらかじめ決めてしまっていることがあります。
東洋医学では朝の弱さを脾胃の立ち上がりの弱さとして捉えることがある
東洋医学では、朝に食が進まず、のちに甘味や重いものへ偏りやすくなる流れを、脾胃の働きの弱さとして捉えることがあります。朝は一日の運化が立ち上がる時間であり、ここでうまく動き出せないと、その後の食の流れも乱れやすいと考えます。
また、朝に何も入らず、あとで強い食欲が来る状態は、単なる意思の問題ではなく、身体のめぐりと受け皿の問題として理解されることがあります。もちろん説明の主軸は現代の食欲研究ですが、朝の弱さが一日の後半の乱れにつながるという感覚は、東洋医学の見方とも重なります。
夜の過食は朝から始まっている流れとして見たほうがわかりやすい
コアサイクルチューン(循環調律)では、生活の好循環を乱す要素を不協(ディゾナンス)、それを整える行動を解決(レゾリューション)として扱います。
この視点で見ると、夜の過食や間食は単発ではありません。朝を抜く、あるいは糖質中心で早く空腹が戻る、昼以降に食欲が強まる、強い報酬のある食べ物へ寄る、食べすぎる、翌朝また食欲がわかない、という流れで固定されていきます。
朝にたんぱく質を入れると食欲の波をゆるやかにしやすい
日常で入れやすい解決(レゾリューション)は、豪華な朝食ではなく、たんぱく質を少し意識して朝に入れることです。卵、ギリシャヨーグルト、納豆、豆腐、サラダチキン、プロテインドリンクなど、食べやすい形はいろいろあります。量を完璧にするより、朝にたんぱく質源が入ることのほうが重要です。
朝から食欲が弱い人は、固形を無理に増やすより、飲みやすいものや少量で始めるほうが続きやすくなります。大事なのは、朝食を根性の課題にしないことです。後半の崩れを防ぐための準備として扱うと意味づけしやすくなります。
夜の食欲だけを責めるより朝の設計を変えるほうが実用的である
もちろん、朝にたんぱく質を入れれば誰でもすぐ過食しなくなるわけではありません。睡眠不足、ストレス、帰宅時間の遅さ、入手しやすい食品環境など、食欲に影響する要因は他にもたくさんあります。また、この種の研究は若年者や朝食欠食者を対象にしたものが多く、全員に同じ程度あてはまるとは限りません。
それでも、食欲の崩れを夜だけで説明するより、朝からの流れで見る視点はかなり実用的です。間食や過食を減らす最初の一手は、夜に我慢を増やすことではなく、朝に満腹感の土台を作ることなのかもしれません。