同じ長文を読むなら、紙でもスマホでも内容は同じです。

それなのに、紙だと最後まで読めるのに、スマホだと途中で頭に入らなくなることがあります。

画面の光が原因なのか。 通知が気になるからなのか。 単なる慣れなのか。

2022年の日本の研究は、かなり変わったところを測りました。

紙とスマホで文章を読んでいる最中の「ため息」と前頭前野の活動です。

34人の健康な参加者では、スマホで読んだときの方がため息が少なく、前頭前野の活動が高く、読解成績が低くなりました。

ただし、これは「紙の本にはリラックス効果がある」と直接証明した研究ではありません。

面白いのは、媒体が違うだけで、読むときの身体の使い方まで変わっていたことです。

スマホ読書では、理解度が下がり前頭前野の活動が高まった

研究では34人が、紙とスマートフォンで文章を読み、その後に内容理解のテストを受けました。

読書中には前頭前野活動と呼吸も測定しています。

結果は、

  • スマホ読書では理解成績が低い
  • 前頭前野の活動が高い
  • ため息が少ない

という組み合わせでした。

「脳活動が高い=脳がよく働いている」と思いたくなりますが、成績は逆でした。

研究者らは、スマホ読書では前頭前野が過剰に活動し、ため息の抑制との相互作用が理解低下へ関わる可能性を示しています。

一方、通常の一呼吸一呼吸の回数が大きく変わったわけではありません。

差が出たのはため息でした。

ため息は「退屈した証拠」だけではない

ため息は、嫌になったときに出るものという印象があります。

でも生理学的には、通常より深い呼吸が入り、呼吸パターンをリセットする役割を持ちます。

この実験では紙の方がため息が多かった。

だからといって、「ため息を意識的に増やせば読解力が上がる」とは言えません。

研究が示したのは相互関係です。

ただ、長文を読むときに身体がずっと同じ浅い呼吸・同じ姿勢で固定されているか、それとも時々大きく呼吸が切り替わるか、という観察点は得られます。

スマホは「読む機械」以外の役割を持ちすぎている

この実験は通知やSNSへの切り替えを直接比較した研究ではありません。

それでも日常のスマホには、

メッセージ ニュース SNS 動画 検索 決済

など、読書以外の入口が同居しています。

長い文章を読んで少し負荷が上がった瞬間、親指一つで別の刺激へ移れます。

紙の本にはその出口がない。

この違いは、研究の「スマホ媒体そのもの」の結果とは分ける必要がありますが、実生活ではかなり大きな条件です。

疲れている夜ほど、長文を読むより短い刺激へ移る方が簡単です。

Dissonance Cycle 不協が作る悪循環
疲れた状態で長文 を読む 理解するための負荷が 高く感じる スマホ上に別の入 口がある 少し詰まると別アプリ へ移れる 短い刺激へ切り替 える 長文へ戻るまでの摩擦 が増える さらに長文が重く 感じる 次も短い刺激を選びや すくなる 読む時間が細切れ になる 内容がつながりにくく なる

ここでスマホが悪いのではありません。

長く一つの対象へ注意を置きたい場面と、何でもできる端末の相性が悪いことがあるという話です。

紙へ替える価値は「癒やし」より、選択肢を減らせることにある

紙の本に替えたら副交感神経が上がる、と今回の研究だけからは言えません。

でも、読書を一つの行動として閉じやすいのは確かです。

寝る前の10分。 昼休みの最後。 電車で一章だけ。

そこだけ紙にしてみる。

Resolution Cycle 解決が作る好循環
読む時間を短く区 切る 一章・10分など終点 を作る 紙へ替える 読書以外の入口を物理 的に減らす 姿勢と呼吸を時々 変える 詰まったら一度目線を 上げる 合う場面だけ紙を 残す デジタルの便利さと使 い分ける 理解度を比べる 読後に何が残っている かを見る

紙が必ず優れていると決める必要はありません。

検索しながら読むならスマホやタブレットの方が便利です。

文字サイズを自由に変えたい人にもデジタルは重要です。

目的によって媒体を選ぶ。

情報を探すときはスマホ。 一つの長文へ入りたいときは紙。

そのくらいの分け方でも、読み方は変わります。

東洋医学の「久視」は、媒体より“見続けること”へ目を向ける

東洋医学の古い表現に「久視傷血」があります。

長く見続けることを身体の消耗として見る考え方です。

現代の前頭前野活動やため息と同じ機序を意味しません。

ただ、

小さい画面を近くで見続ける 目を上げない 身体を動かさない 頭だけ働き続ける

という状態を、内容ではなく見る行為そのものの負荷として捉える補助線にはなります。

紙かスマホかだけでなく、どれくらい連続して見ているかまで見る。

その方がCCTでは使いやすいです。

「紙なら落ち着く」ではなく、何を変えたい読書なのか

この研究から一番面白く持ち帰れるのは、紙の本礼賛ではありません。

同じ文章でも、媒体が変われば脳活動、呼吸の一部、理解度が変わった。

だから、読む内容だけではなく読む環境も認知の一部です。

長文が頭に入らない夜に、もっと集中しようとする前に紙へ替えてみる。

それで理解しやすくなれば、その場面では紙が解決(レゾリューション)になっています。

変わらなければ、疲労や眠気の方が上流かもしれません。

媒体を正解にせず、一周後を見る。

それがCCTでの使い方です。

Research Note

Research Note

Reading on a smartphone affects sigh generation, brain activity, and comprehension

2022 Motoyasu Honma ほか
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研究種別
クロスオーバー実験研究
どこの研究か
Showa University など / Scientific Reports
どんな内容か
紙とスマートフォンで文章を読み、理解度、呼吸、前頭前野活動を比較した
対象・条件
健康な成人34人
主な結果
スマホ読書では紙よりため息が少なく、前頭前野活動が高まり、読解成績が低かった
限界
小規模な短時間実験で、紙の読書が長期的なメンタルヘルスや睡眠を改善することを示したものではない