アレルギーがある人の中には、以前より症状が重くなった、薬が効きにくい気がする、息苦しさや鼻づまりが長引きやすい、と感じることがあります。花粉やダニなどの原因は同じはずなのに、身体の反応だけが強くなっているように見えるとき、その背景には体重や代謝の状態が関わっていることがあります。
アレルギーは外から入ってくるものへの反応として理解されがちですが、実際には身体の受け皿の側がどういう状態かでも、症状の出方はかなり変わります。疲れている時期や体重が増えた時期ほど悪化しやすいと感じるなら、それは単なる気のせいではないかもしれません。
"Mounting evidence has demonstrated that obesity amplifies type 2 inflammation."
(肥満は2型炎症を増幅することを示す証拠が、次第に積み上がってきています。)
Wenlong Li らによる Obesity: Next game changer of allergic airway diseases?(肥満はアレルギー性気道疾患の新たな転換点になるのか?)は、肥満が喘息、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎などのアレルギー性気道疾患にどう関わるかを整理したレビューです。ここで見えてくるのは、肥満が単なる合併症ではなく、炎症の型、症状の重さ、治療の効きやすさにまで関わりうることです。
この研究では、人研究と動物研究の両方をもとに、肥満がアレルギー性気道疾患の有病率、炎症パターン、症状の重さ、治療反応性にどう関わるかを統合して検討しています。
この研究が面白いのは、肥満とアレルギーを別々の問題としてではなく、互いに増幅しやすい流れとして見せてくれる点です。アレルギーがつらいとき、原因抗原だけでなく、身体全体の炎症トーンを見たほうがわかりやすいことがあります。
アレルギーのつらさは原因物質だけでは説明しきれないことがある
日常では、アレルギーは花粉、ダニ、ハウスダストのような外からの刺激が原因だと考えやすいです。もちろんそれは間違いではありません。ただ、同じ季節でも年によって重さが違う、疲れている時期ほどひどい、体重が増えてから息苦しさが強くなった気がする、といった変化は、身体側の条件が変わっている可能性を示しています。
脂肪組織は、単なるエネルギーの貯蔵ではありません。肥満が進むと、脂肪組織は炎症や免疫に関わる物質を出しやすくなり、身体全体の反応性を変える方向に働くことがあります。すると、同じ抗原に対しても症状が強く出やすくなります。
肥満はアレルギー性炎症の型と強さを変えうる
アレルギー性気道疾患では、好酸球、IgE、IL-4、IL-5、IL-13などが関わる、いわゆる2型炎症がよく知られています。今回のレビューでは、肥満がこの2型炎症を増幅しうる一方で、場合によってはIL-17や好中球が関わる別の炎症パターンも強める可能性が示されています。
ここが重要です。肥満があると、アレルギーが単純に強くなるだけでなく、炎症の性質そのものが少し変わることがあります。その結果、喘息なら咳や息苦しさが長引きやすくなり、鼻炎や副鼻腔炎なら詰まりや過敏さが強くなりやすくなります。
脂肪組織の炎症は気道の炎症ともつながりうる
なぜこうしたことが起きるのでしょうか。ひとつは、肥満が慢性の軽い炎症状態を作りやすいからです。脂肪組織からはレプチン、IL-6、TNF-αなど、免疫や炎症に関わる物質が出やすくなります。これらは全身の炎症トーンを上げ、気道でも反応が起きやすい土台を作ることがあります。
さらに、肥満では肺や胸郭の動きも不利になりやすく、息苦しさが増えやすくなります。つまり、炎症だけでなく、呼吸の力学的な条件も悪化しやすいのです。喘息がある人では、この二重の負担が症状を強める方向へ働きます。
薬が効きにくい感覚は炎症の質が変わっているサインかもしれない
肥満があるアレルギー疾患では、標準的な治療への反応が鈍くなることがあります。レビューでは、特に喘息で、BMIが高い人ほど吸入ステロイドへの反応が小さくなる傾向が示されています。これは治療が無意味という話ではなく、炎症の質や背景が変わっているため、従来の治療だけでは十分に抑えきれない場合がある、ということです。
だからこそ、症状を自己管理不足だけの問題にしないほうがよいです。土台条件が変われば、同じ病気でもつらさは変わります。
東洋医学では痰湿や熱のこもりとして鼻や呼吸の悪化を捉えることがある
東洋医学では、余分な重さや停滞を痰湿として捉え、それが鼻づまり、咳、息苦しさの背景になると考えることがあります。さらに、炎症のこもった状態は熱として表現され、痰湿と熱が重なると、通りが悪くなり反応が強まりやすいと見ます。
とくに脾胃の働きが弱り、余分な湿が作られやすい状態では、身体が重く、鼻や気道にも滞りが出やすいと理解されることがあります。現代の免疫研究とは理論体系が異なりますが、身体の中に余分な重さや炎症があると、アレルギー症状も悪化しやすいという実感を、別の言葉で説明していると見ることもできます。
肥満とアレルギーは悪循環を作りやすい
コアサイクルチューン(循環調律)では、生活の好循環を乱す要素を不協(ディゾナンス)、それを整える行動を解決(レゾリューション)として扱います。
この視点で見ると、肥満とアレルギーは単発の合併ではありません。体重が増える、全身の炎症が高まりやすくなる、アレルギー症状が悪化する、息苦しさや鼻づまりで活動量が落ちる、さらに体重管理が難しくなる、という流れで互いを強めやすくなります。
体重だけでなく炎症が下がりやすい生活を作ることが大切である
解決(レゾリューション)は、短期で急に痩せることではありません。まずは、炎症が下がりやすい生活へ少しずつ寄せることです。睡眠を確保する、夜の過食を減らす、朝や日中に少し歩く、食事のタイミングを整える。こうした地味なことが、結果として体重にも炎症にも効いてきます。
特に喘息では、体重が少し下がるだけでも症状や生活のしやすさが改善しやすいことが知られています。大事なのは、体重そのものを責めることではなく、身体が過剰に反応しにくい土台を作ることです。
アレルギーが治りにくいときは体重と炎症も見たほうがよい
もちろん、肥満があれば必ずアレルギーが悪化するわけではありませんし、すべてのアレルギー疾患で同じように関係が強いわけでもありません。レビューでも、アレルギー性鼻炎の関連には一貫しない結果があり、疾患ごとに差があります。また、今回の論文はレビューであり、ひとつの介入試験がすべてを証明したものではありません。
それでも、少なくとも喘息を中心としたアレルギー性気道疾患では、肥満が症状の重さ、炎症の質、治療反応に関わる可能性はかなり高いです。アレルギーが治りにくいとき、原因抗原だけでなく、体重と慢性炎症の状態を見ることはかなり現実的な視点です。