同じように食べているつもりでも、ある時期はお腹が軽く、別の時期は張りやすかったり、肌や気分まで重く感じたりすることがあります。腸の話になると、何か特定の食品だけを食べれば一気に整うように語られがちですが、実際にはそんなに単純ではありません。

それでも、発酵食品を続けて食べると腸の環境に変化が出るのではないか、という感覚は多くの人が気になるところです。腸が整うという言葉は曖昧ですが、研究ではそれを腸内細菌の多様性や炎症マーカーの変化として追いかけようとしています。

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"Alternatively, the high-fermented-food diet steadily increased microbiota diversity and decreased inflammatory markers."

(これに対して、高発酵食品食では、腸内細菌の多様性が着実に増加し、炎症マーカーが低下しました。)

Hilary C. Wastyk らによる Gut Microbiota-Targeted Diets Modulate Human Immune Status(腸内細菌を標的にした食事はヒトの免疫状態を変化させる)は、発酵食品を増やした食事が腸内細菌の多様性や免疫・炎症関連指標にどう関わるかを調べた研究です。発酵食品が何となく体に良いという印象ではなく、腸内環境と炎症の流れにどのような変化が出るかを具体的に見ている点が、この研究の面白さです。

この研究では、健康な成人を対象に、発酵食品を増やす食事群と食物繊維を増やす食事群を比較し、約10週間の介入を行っています。 この研究が面白いのは、発酵食品を単なる健康イメージではなく、腸内細菌の多様性や炎症マーカーというかたちで評価している点です。

腸の乱れは便通だけでなく全身の重さとして出やすい

日常では、腸の不調は便通の問題としてだけ扱われがちです。けれど実際には、張る、重い、食後にだるい、甘いものや脂っこいものが続くと崩れやすい、肌が荒れやすい。そうした形で、全身のコンディションとして現れることがあります。

しかも腸の状態は、一回の食事だけで大きく決まるわけではありません。夜の過食、加工食品への偏り、睡眠不足、ストレス、水分不足。そうしたことが数日から数週間単位で積み重なって、腸の流れを固定していきます。

発酵食品は腸内細菌の多様性と炎症にどう関わりうるのか

この研究では、発酵食品を増やした群で、腸内細菌の多様性が上がり、いくつかの炎症関連マーカーが下がる方向が示されました。これは、発酵食品を食べれば誰でも劇的に変わるという話ではありませんが、腸と免疫のつながりを考えるうえでかなり興味深い結果です。

発酵食品には、微生物そのもの、発酵過程でできた代謝産物、食べやすく変化した栄養成分など、複数の要素があります。つまり「ヨーグルトが良い」「納豆が良い」といった単品の話より、発酵というプロセス全体が腸に与える影響を見たほうが、研究の読み方としては自然です。

腸の状態は食べ方と生活リズムで固定されやすい

腸は食べた物だけで決まるわけではありません。睡眠不足で食欲が乱れる、ストレスで甘い物や脂っこい物に寄りやすくなる、夜遅くに食べる、水分が少ない、朝のリズムが崩れる。こうした生活全体の乱れが重なると、腸は同じ方向へ引っ張られやすくなります。

すると、発酵食品だけを足しても、土台の流れが崩れていれば実感しにくいことがあります。逆に言えば、発酵食品は単独の健康食品というより、腸が整いやすい生活の一部として位置づけるほうが現実に合います。

東洋医学では胃腸の弱りを脾胃と湿の乱れとして捉えることがある

東洋医学では、消化吸収の働きを脾胃のはたらきとして重視します。食べたものをうまく運化できないと、身体の中に湿がたまりやすくなり、張る、重い、だるい、頭もすっきりしないといった感覚が出やすいと考えます。

ここでいう湿は、単に水分が多いという意味ではなく、身体の中に余分な重さや停滞が残っているような状態を含みます。食後に重い、朝すっきりしない、お腹が張りやすいといった実感は、この湿の概念でまとめて理解されることがあります。

また、発酵食品や温かい汁物のような消化に負担をかけにくいものは、脾胃を支えやすいものとして扱われることがあります。もちろん現代の腸内細菌研究とは理論体系が違いますが、腸の不調を便通だけでなく全身の重さとして捉える視点には重なる部分があります。

腸の状態は毎日の積み重ねで崩れやすくも整いやすくもなる

コアサイクルチューン(循環調律)では、生活の好循環を乱す要素を不協(ディゾナンス)、それを整える行動を解決(レゾリューション)として扱います。

この視点で見ると、腸の乱れは単発ではありません。食事が偏る、腸が重くなる、張りや便の違和感が出る、だるさが増える、さらに手軽で刺激の強い食べ物へ寄る。そうした流れで固定されやすくなります。

Dissonance Cycle 不協が作る悪循環
不協 夜の過食や偏った食事 が続き、発酵食品も少 ない 身体状態 腸内環境の偏りや重さ が続き、張りやだるさ が出やすくなる 心理状態 面倒さが増し、さらに 手軽で刺激の強い食事 へ寄りやすくなる 不協 乱れた食行動がそのま ま翌日以降も続く 次の行動 食事内容が単調になり 、腸を整える材料が不 足しやすくなる

発酵食品は少量でも続ける形のほうが使いやすい

日常で入れやすいのは、極端な腸活ではなく、発酵食品を少量でも続けることです。ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌など、普段の食事に無理なく置けるもののほうが続きます。大切なのは、一度に大量に入れることより、生活の中で繰り返し入ることです。

また、発酵食品だけに頼らず、水分、食物繊維、睡眠、過食の頻度も一緒に見る必要があります。発酵食品は、崩れた流れを単独で逆転させる切り札ではなく、整う方向へ少しずつ寄せる材料だと考えたほうが使いやすいです。

Resolution Cycle 解決が作る好循環
解決 発酵食品を無理のない 量で継続し、水分や食 事全体の流れも整える 身体状態 腸内環境の多様性や消 化の流れを支える条件 が作られやすくなる 心理状態 お腹の重さやだるさが 軽くなることで、食行 動も整えやすくなる 解決 発酵食品を生活リズム の中に小さく固定する 次の行動 刺激の強い食事へ流れ にくくなり、整う行動 を続けやすくなる

腸を整える近道は単品より流れを変えることにある

もちろん、この研究だけで発酵食品の効果を断定することはできません。対象は健康な成人で、食品の種類や量も管理された条件でした。腸内細菌の反応には個人差が大きく、合う・合わないもあります。

それでも、腸を整える方法をサプリや一発逆転で考えるより、毎日の食べ方の流れを見直す視点はかなり重要です。腸は静かな臓器ですが、生活の乱れをかなり正直に反映します。だからこそ、整え方も静かで地味なくらいが、かえって長く効きやすいのかもしれません。

Research Note

Research Note

Gut Microbiota-Targeted Diets Modulate Human Immune Status

2021 Hilary C. Wastyk, Georg K. Fragiadakis, Daniel Perelman ほか
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どこの研究か
Cell に掲載された研究です
どんな内容か
発酵食品を増やす食事と食物繊維を増やす食事を比較し、腸内細菌叢の多様性や免疫・炎症関連指標がどう変化するかを調べた研究です
対象・条件
健康な成人を対象に、約10週間の介入で発酵食品群と高食物繊維群を比較し、便サンプルや血液指標などを評価しています
限界
健康成人中心の比較的小規模研究で、全ての人に同じ効果が出るとは限りません。発酵食品の種類や量、もとの食習慣によって反応は変わりえます